『産直コペル』が、日本で最初の、そしておそらくは唯一のLFP特集を敢行したのは昨年12月に発売されたVol.51のこと。しかし、その時点では、小誌の特集は何とか形にはなったものの、その実態はいずれの参加自治体も初の取り組みに四苦八苦で、結果が見えないのはもちろん、年度内の完成すら危ぶまれていた。そこでコペルでは、令和3年度事業が終結した今、改めてLFPを特集することを決意。LFPが何を生み出したのかを探った。
LFPは何を生み出したのか?
LFPは何を生み出したのか?―本号の特集テーマはこれだ。本誌51号(2022年1月発行)に続き、LFP=地域食品産業連携プロジェクトの現状と課題にスポットを当てた(※2021年度中は「食農連携プロジェクト」と呼ばれていた事業が2022年度に改称した)。
この特集では、2021年度にLFPに取り組んだ道府県において、どのような取り組みが行われ、いかなる成果が生み出されたかを簡潔にまとめてある(取り組み地域のすべてを網羅することはできなかった。ご容赦願いたい)。
本誌が、わずか半年の間に同じテーマで2回の特集を組むのは珍しい。それほどこのLFP事業に注目するのには理由がある。
後に詳しく見るように、LFPでは、地場産の農林水産物を活用した食品産業が地域の様々な業種の事業者との新たな連携を呼び起こし、今までにはなかった〝新しい何か〟を生み出していく、そのような仕組みを創り出すことに主眼を置いている。この事業の基本的コンセプトに強く共感しているからだ。
このため産直コペルの記事だけでなく、そもそも産直新聞社としても、2021年度の事業スタートより、長野県からの委託を受けて長野県の地域事務局を担ってきた。まさにその〝しくみ〟づくりが重要だと考えるからだ。
経済的収益のために「モノ」をつくり・売る試みの次元を超える
これまで地域農業の振興のために様々な施策がとられてきた。食料産業クラスター育成事業、農商工連携事業、農業の6次産業化推進事業など、地域の農業・食料資源を活用して農業と食品産業の連携を図り、農村地域の活性化を図るものであった。
その意図・目的は基本的に正しかったとはいえ、これらの事業の中で実際に展開されてきたことは、ある程度生産力のある農家と、これまたある程度企画力・生産力・販売力がある加工事業者や販売事業者が連携して「売れるモノ」をつくり、(多くの場合首都圏などの人口密集地にそれを搬送して)、それを売ってみせるという形のものが多かったと言えよう。
もちろんこうした取り組みは、利益を上げる経済行為としては意味のあるもので、これで潤った農家や加工事業者・販売者がいたことは事実である。そこにはそれ相応の効果があったと言えよう。
しかし、こうした「売れるモノをつくる」取り組みは、結局、単体の農家と単体の加工事業者・販売者などの〝点〟のつながりを生み出しただけで、それによってその地域に、ある「売れるモノ」が生み出されたとしても、それに触発されて次々と別の「売れるモノ」が生み出されてくる、あるいは地域がそれに向けて継続的に力を合わせていくような創発的で継続的な地域食料産業の発展につながった例は少なかったように思われる。
「社会的課題」解決のために経営資源を結集し、道を拓くしくみ
LFPでは、この点を、地域の食品産業を中心にした多様な事業者・関係者が、それぞれの企業としての課題を超えて、共通する「社会的課題」の解決を目指して、知見・技術・販路・人などの経営資源を結集し、自由闊達な意見交換を通じて解決方法を模索する場=プラットフォームを構築することで打開しようとしている。食や農に関わる人々が、同じ社会的課題の解決のために、地域の力を集めて前に進む〝しくみ〟づくりに重点を置いているのである。
もちろん今日は情報化社会であり、他地域の人の知恵や力を借りることもあるであろう。しかし、地域の食品産業の連携を創り出していくことが基本テーマであるのだから、何より、人々が生きて・生業を営んでいる〝地域〟において、課題意識を持つ人々が集まり、何が解決するべき社会的課題なのかを議論し、解決策を一緒に考え、力を合わせて実践する―その〝場〟を、つまり〝しくみ〟をつくることが核心なのである。
底流において創成期の農産物直売運動につながるもの
この基本的コンセプトは、ここ数年来声高に叫ばれてきている「地方創生」のソフト面=人づくりの核心問題につながるのではなかろうか。
それは、底流において、地域の人々の内発的主体性を重視し、それの力を信じて、直売所での開かれた人の交流を創り出していった創成期の農産物直売運動につながるのではないかとも思う。
このような視点から、本誌は引き続きLFPに注目している。自ら率先してその取り組みを進めて行きたい。今年も全国の経験の交流と発展に資する決意である。
全国の読者の皆さん! 広範な食農連携・食品産業連携のネットワークを構築・拡大していくために、力を合わせてがんばろうではないか!
(産直新聞社 代表取締役兼編集長 毛賀澤明宏)
※この記事は「産直コペルvol.54(2022年7月号)」に掲載されたものです。