LFPとは何を目的にした、どのような仕組みの取り組みであったか、その特徴はどこにあったか―本誌は第51号で特集を組んだが、令和4年度のスタートにあたり、ここでその概要を「おさらい」しておくことにしよう。(文・越智加代子)
「社会的課題解決」と「経済的利益」の両立を目指す
令和3年度に始まった農林水産省の「地域食農連携プロジェクト」。Local Food Projectの頭文字を取り、「LFP(エルエフピー)」と呼ばれる。
LFPは、社会的課題解決と経済的利益の両立を目指して、地域の農業資源を有効利用し、持続可能な地域産業の創造につながる新たなビジネスモデルの創出(ローカルフードビジネス)を目的とした事業である。都道府県が、実務を委託した外部団体や民間企業とともに事務局を構成し、食と農に関する事業者、のみならず物流やマーケティングの専門家、旅行会社をはじめとする観光関連の事業者、地域の大学などの教育機関やシンクタンクなど多様な関係者が参画して事業を進めた。
初年度は21道府県が参加。多様な食の産業関係者に加えて、物流や観光関連などまったくの異ジャンルの事業者が一堂に会して意見交換して情報や知識の共有を促す研修会などをプラットフォームとして形成。参加者の問題意識に沿ったテーマ毎にチームを編成し、試作品製造、デザイン、市場評価、販売促進までを単年プロジェクトとして立案した。そのうち、社会的影響が大きく、かつ、実現可能性が高いものを自治体ごとに一つ選び、間接補助対象事業として上限400万円の補助金を交付した。
なお、農林漁業者、食品加工業者、流通・販売事業者の3つの領域からそれぞれ1者以上の事業者が参加することが条件であった。
多種多様な商品が創出、クラウドファンディングも活用
令和3年度のLFP事業では、様々な地域資源とユニークなアイデアによって、多種多様な商品が生み出された。いくつか例出すると、静岡県では事務局に支援実績、専門性の高いメンバーをコーディネーターとして配置。これまでの経験やノウハウを提供し、コロナ禍でのフードロス発生の社会問題解決のために、地域情報を発信するメディアが連携し、生産者のストーリーを伝える冊子付きのミールキットが開発された。レシピを開発したのも静岡を代表する料理人というオール静岡体制で臨んだキットは高い評価を受けた。
徳島県では、「にし阿波」地域の特色ある農法や文化を伝える仕組みづくりに加え、特徴的な雑穀や加工品などを組み合わせ、4種類の「にし阿波ギフトセット」を試作。岩手県では、「いわて果実」の内リンゴを使ったプレザーブをつくる以外に、いわて羊連携協議会を主体として、めん羊の羊毛・皮を使った生活用品の製作・発信も実施するなど、農産物にとどまらず多種多彩な資源やアイデアを駆使した様々な商品が開発された。
また、事業継続の資金確保のため、クラウドファンディングの活用に挑戦したこともLFPの特徴の1つだ。大手のクラウドファンディングサービス会社「Makuake(マクアケ)」と協力し、「応援購入」という形で、広く一般の利用者からの資金提供を募った。
クラウドファンディングでは、プロジェクトのコンセプト、これを商品として形づくるに至ったストーリー、商品がユーザーに提供する価値について、携わる担い手の想いを交えて表現し、長野県、静岡県、岐阜県、香川県、宮崎県、鹿児島県の6県が実施した。結果、岐阜県の「大切なひとに食べさせたい栄養満点スープ」は31日間で65万3600円(サポーター実績110人)を獲得。最終的には100万8800円(同158人/対目標金額比336%)、長野県の新ジャンルのエノキを使った代替肉ハンバーグ「エノキート」が95万5700円(同225人/同637%)に達するなど、当該商品を生み出したプロジェクトが掲げた「社会的課題の解決」への理解・共感がどの程度得られるかが、作り手側の都合ではなく、ユーザーの立場から確認できた―と、クラウドファンディングを推奨した中央事務局は評価している。
地域の創発性を引き出したプラットフォーム
そして、LFPの特徴として忘れてはならないのが、食農産業関連事業者+αが集まるプラットフォームの構築である。このプラットフォームは、地域の行政機関や中核機関等が組成の推進役となり、LFPが目指す課題解決に向け、事業者や組織・団体等が広く参集してつくりあげられた。
参加者は「LFPパートナー」と呼ばれ、全国で約1700社が参加した。すそ野の広がりや会合の開催回数などは道府県ごとにまちまちであったが、等しくプラットフォームの研修会では様々な意見が飛び交い、単独では生まれなかった新しいアイデアが創出され、商品化へと結びついていった。
宮崎県では、国からの間接補助事業の対象として選ばれた1つのプロジェクト以外にも、県独自の補助金が支給されて事業が実現されるという形も生み出された。また、4年度以降に、3年度事業のさらなる発展に向けて、独自予算を用意する自治体も現れている。
プラットフォームで繋がった新たな人脈が、今なお拡大を続けている自治体も多い。そんな人脈や3年度の経験・実績を元に、次年度がどんな広がりをみせるのか? 令和4年度のLFPに、益々の飛躍を期待せずにはいられない。
※この記事は「産直コペルvol.54(2022年7月号)」に掲載されたものです。