日本各地には、新旧織り交ぜ、かくも多くの冷や汁が存在している。
そんな中から、先人の知恵が生み、育て、そして伝えられてきた、地域に根付く冷や汁を編集部が選抜。
夏を乗り切る郷土食《冷や汁》として紹介します。
盛夏到来。徐々にではあれワクチン接種が進展する一方で、変異株への置き換えを伴った新型コロナウイルスの感染拡大がこれまでにも増して激化している。批判や懐疑の声を押し切る形で開催された東京オリンピックを引き金にして、〝人流〟が再拡大し、8月末から9月にかけてさらなる危機をまねくのではないか―世界は固唾を飲んでその推移を見つめている。
このような情勢下で、「産直コペル」9月号の特集はどこに焦点を当てるか? 編集部はいささか悩んだ。コロナ禍の厳しい経済状況を克服するべく奮闘する各地の直売所に焦点を当てるか、同じくコロナ禍で新たに注目が集まり始めているマイクロツーリズムや地域や社会のコミュニティ力にフォーカスするか? しかし、コロナ禍に陥ってから約1年半、いささか硬い話ばかりが続いてはいないか?…
そんな時、読者アンケートに寄せられたある直売所の運営者の言葉が編集部の胸に響いた。「コロナ禍だから地域のおいしい物を食べて元気になってもらうのも直売所の役目」…。
そうか! コロナ禍をはねのけ、うだる暑さを切り抜ける各地の〝夏の郷土食〟を取り上げよう。地場産食材にこだわる直売所らしいレシピを提案してもらおう…そんな脈絡で今回の特集テーマ「夏を乗り切る郷土食―冷や汁」が決まった。
「冷や汁」と言えば宮崎県を代表する郷土食を思い浮かべるが、実は全国各地に「冷や汁」という呼び名の食、またこれと同様の趣向による食がある。分かる限りリストアップし、可能なところにはでかけて取材し、読者や知り合いの手も借りて〝夏場向き〟の〝冷たい〟、〝水気たっぷり〟の郷土料理を取り上げよう。 こうして本号の特集は出来上がった。諸方面の方々に、多大なるご協力をいただいたことに感謝したい。
(産直コペル編集長・毛賀澤明宏)
※この記事は「産直コペルvol.49(2021年9月号)」に掲載されたものです。