「集落営農」とは、農林水産省によると、複数の個人が集まって、機械の共同利用、作業の共同化により経営の効率化を図る取り組みだ。農村の高齢化や担い手不足に対して、地域農業・農村の維持・発展に集落営農という選択肢があるとしている。広範囲にわたる定義で、農事組合法人や株式会社も含まれる。
地域社会の維持や地域の担い手不足をきっかけとして始まった集落営農は、2007年に「担い手経営安定新法」の制定により、品目横断的経営安定対策(*1)の助成対象として位置付けられ、集落営農の法人化に向けた取り組みが進んできた。2010年頃には集落営農の法人化も一段落し、当初の集落営農とは少し印象も変わり、また集落営農で大規模に農業をしていた担い手も高齢化してきて、それへの対応という新たな課題も生まれてきた。
高齢化や担い手不足への対応という視点からスタートしたのだが、今度は、その集落営農の担い手自身が高齢化して、後継者不足に直面している。
栽培品目も、米か、その代替作物としての麦・大豆・そばなどが中心だったが、減反政策の終了やTPPによる市場開放という新たな条件の下で、米から野菜・果樹への転換が求められている。さらに直売所運営や加工、6次産業化へと歩みを進める必要性も浮かび上がっているようだ。
一方で、地域の直売所も、高齢化や担い手不足による商品不足が共通の課題となっている。以前は生産者同士が寄合で運営していた直売所であったからこそ15%程の手数料収入だけでやっていられたが、現在は、専門の販売スタッフを抱え、その人件費も稼ぎ出さなければならず、儲けだけが終局目標ではないとはいえ、ある程度の収益性のある事業も経営の中に位置付けなければならなくなってきている。
その一つの選択肢として、直売所運営団体が、地域の集落営農組織と共同連携して、農業生産にも踏みだす等の道が考えられる。不足気味の商品を、地域の高齢者の力で共同で生産し、併せて新たな担い手も育てていく。若者にも高齢者にとっても働きがいのある場所になっていく。――そのような地域の可能性を切り開くために、「集落営農」の現状と今後に焦点を当てた。(産直コペル編集部)
集落営農のタイプ
地域によって方法や形、分け方はさまざまだが、集落営農のタイプには主に3つの形がある。
①ぐるみ型
集落のすべての農地を集積し、集落の農家全てが担い手となり集落ぐるみで地域農業を維持していく。中山間地や小規模集落に見られ、地域農家の声に基づいた経営ができることがメリットだ。
②オペレーター型
農地を預かり、農作業をするオペレーター数名で経営をしていく。水稲が多く、大規模農地で見られる。
③2階建方式
1階部分を地域の合意形成や農地集約などを行う集落営農組合が担い、2階部分が運営や経営を担っていく。農地所有者の多い地域などでは、合意形成と経営が分かれることで効率的に運営できる。
ほかにも、最近では行政も加わった3階建方式や、一般社団法人としての組織化など新しい動きも出てきている。
※この記事は、『産直コペル』Vol.34(2019年3月号)の特集を抜粋したものです。