春から初夏へー目眩く山菜の季節
「目眩く」(めくるめく)とは、直接は「目がくらむ」「めまいがする」の意だが、一歩踏み込んで、「あまりの素晴らしさに理性を失う」の意で使われることもある。
冬眠から目覚めた熊が体内に蓄積した毒素を分解するために食べると言われるフキノトウから始まり、ウド・タラノメ・ゼンマイ・ヤマミツバ・ワラビ…と続く山菜は、初春から初夏にかけて、まさに「目眩く」里山の宝物だ。
本号では、この山菜を、特に山間地域の直売事業のキラーコンテンツとしてとらえ、スポットを当てた。
山の商い=直売事業の一つの原型
全国各地に春の山菜を目玉商品にする直売所は多数存在する。季節になるとそこに希少性が高い山の幸を求めて人々が集い、採り方・見分け方・食べ方・貯蔵の仕方などを教え合って、好みのものを購入する。
この人々の到来を楽しみにして、出荷者は野山を駆け回って各種山菜を収穫し、直売所に持ち寄る。「足が痛い」「腰が悪い」と言っていた高齢者も山に入り込み、「この時期に稼ぐ!」と心に決めた壮年組(近年若者層も増えているらしい)が豊富な山の恵を郷におろす。
こうした営みは、直売事業が始まって以降一貫して続けられている山の商いの形であり、一つの原型である。
高齢化・物量の減少を越えて
直面する課題は、採取者=出荷者の高齢化と減少(激減)、出荷される山菜の減少、食べ方を知らない消費者の増大と食文化の継承などだ。それを超えるためにどのような取り組みがなされているか? いったいどんな山菜が直売所の店頭に出回り、どのようにしてそれが売られ、いかにして昔からの調理法(新しい食べ方も含めて)が伝えられているか?―山菜王国・山形県を中心に全国から情報を集めて一挙掲載した。
取り扱いが多い「山菜といえばここ!」といわれる直売所を訪問し、昔ながらの楽しい山菜まつりの話などを聞いた。イタリア料理の世界で独特の世界観を確立しているシェフの調理に賭けた思いや、専門家である大学教授の学術的な見識も聞いた。食文化や食育との関係性、出荷量が激減する中で挑戦されている栽培のあれこれ―などにも触れている。
「目眩く」山菜を追いかけると、「目眩く」直売事業にたどり着く。そんな思いを共有していただければ幸甚である。(産直コペル編集長・毛賀澤明宏)
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