お知らせ

【あいきびと通信ー若者による新たな地域づくりの挑戦(第2回)】 ”何もできない”存在。だからこそ、どう関わるか?

あいきびと 代表 安藤あかり

長野県南佐久郡北相木村で、村内外の交流を促して地域の活性化を目指す団体「あいきびと」。その代表を務める同村出身の安藤あかりさんは、札幌と北相木村を行き来しながら、仲間とともにあいきびとの活動に取り組んでいる。そんな安藤さんが、活動を通じて感じ考え、実践している“新しいかたちの地域づくり”について伝える新連載。第2回は、地域づくりにおいて、学生という存在が関わっていくことの課題や意義、可能性について伝える。(編集部)

学生とはいかに何もできないか、それを思い知った

イベント会場。村の中心部である

「あいきびと」は2021年に私も含めて一般の大学生によって始めた活動で、もちろんメンバーは地域づくりの経験なし、唯一あるのは想いだけ! 今回は、そのような中でも度重なる奇跡にも助けられながら何とか続けてくることができた、あいきびとの〝リアル〟についてお伝えできればと思う。

立ち上げのきっかけは、私が地域の方から課題に感じていることをぽろっと聞いたことだった。それは、子供たちの教育のこと。子供が地域外の大学生などと交流する機会があまりないということだ。

私が子供の頃も周りに大学生という存在がいなかったが、大学進学後に地域を面白く探求する大学生にたまたま出会った。また、地域や自然、子供たちに興味を持つ大学生がいることも知った。こうした経験のなかで、山奥という立地的な特性も活かして、地域外の大学生と地元の小中高校生が交流できる場所をつくれないか――、そう考えた。

ある時、北相木村で自然のなかで学童を始めた人たちがいると聞いて会いに行った。お話しをさせていただくなかで、この人たちがいるなら、もしかしたら、山奥という特性を活かした面白い機会づくりを実現できるかもしれないと無謀にも思った。 そこで、その学童の方々に協力してもらって、地域外の大学生と地元の子供たちが交流を図るイベントの企画を始めた。現在の「あいきびと」のはじまりである。

しかし、私たち学生側にこうした企画づくりをした経験のあるメンバーはおらず、話し合いでは意見がまとまらない。結局、学童の方々でイベント準備の多くを負担していただき、開催日の前々日入りした学生メンバーが、現場で当日の宿泊、木工試作品、担当決め、進行などを何とか決めた。

メンバーと村の方の協力でなんとか実現に至った

スムーズに準備を行えたとは言えないまま迎えたイベント当日。急遽、会場の裏山で地域外から訪れた大学生と地元の小学生がみんなで鬼ごっこをすることになり、大学生も子供も全力で楽しんでいた。その場だけ見れば最高の時間だった。

しかし一方で、準備や経験、リスク管理の不足からくる課題も浮き彫りになった。急な雨が降り、テンションが上がった子供たちは雨に濡れながらもずっと遊んでいたが、これが原因でコロナウイルスに感染してしまった子供が出てしまったのだ。ありがたいことに、保護者からは気にせずに今後も同様のイベントを続けてほしいと言っていただいた。学生がいると、保護者だけでは手が足りずに普段はできないような川遊びや、山での鬼ごっこなどの遊びもできると。しかし、こうした温かい言葉をいただいても、〝学生とはいかに何もできない存在なのか〟を思い知った。

1回きりで終わらせないため、必死で考えた

前日入りしたメンバーで準備をする

その後、イベントを企画した私たち学生は、改善方法を考えるミーティングを行ったが、続かなかった。ただ、私はこの1回で終わらせないために、次につなげる方法を必死で考えた。地域に学生が入って何か活動をするということはよくあるが、たいていは続かない。そのため、私たちのイベントも「どうせ今回も1回きりで終わるだろう」と地域の人に思われており、それが悔しかったのだ。

活動を継続していくために私が考えたことは、まずは「地域の人、外から来る大学生が求められていること」と「自分たちが学生なりにできること」が重なっている部分から始めることだった。そして、その活動のなかでたとえ困難があっても「やめないこと」。さらに、たとえ今は実現できないことであっても、地域や団体のビジョンを「言い続けること」。これらを実践することで、あいきびとの運営チームが一度は解散しながらも、また再編した。そして、私たちのイベントを通じて、外から訪れた若者が、子供たちや地域活動との関わりを通じ、地域と自分を知るということが実現し、未来のかたちに期待しワクワクしてくれる人が増えてきた。

試作品づくり。危ない部分をじぜんい把握したのも直前だった

あいきびとの立ち上げ当時、学生だった私たちには「何もできなかった」という悔しさが残った。ただ、きっと〝学生であったからこそ〟可能だったことも多くあったと思う。

活動内容が何だかよく分からなくても、私の想いに共感してあいきびとに参加してくれるメンバーがいた。イベントの初回は、活動がしっかり決まっていない状態でも地域の方々に受け入れてもらい、何とか実行できた。そして、先行きがどうなるか分からなくても、現在まで続けてくることができた。これらは、学生であったからこそなのではないか。

世間では「何もできない」と評価される学生という存在をいかに信じて、ともに成長していけるか、ここに地域の未来が詰まっているような気がする。

筆者紹介

安藤あかり

あいきびと代表。2000年生まれ。長野県北相木村出身。北海道大学農学部在学中に日本全国海外を巡り地域づくりの現場を見る。2021年から長野県で学生×過疎地域に着目し、合宿イベントを多数開催。長野県での活動を継続しながら北海道に戻り、主に学生の起業家教育に携わる。現在北海道と長野県で学生と地域とスモールビジネスをキーワードに一人ひとりが主役になる地域社会を生み出せないか模索中。趣味はロードバイクと料理。