『産直コペル』は、2013年9月の創刊以来、本号で50号を迎えた。
ここまで歩いてこられたのは、ひとえに、地産地消の直売事業や地域づくりの重要性を強く確信している全国の仲間の皆さん、直売所・農家・行政・JA・研究者などの協力と支援があったおかげだ。この場を借りて心より感謝の意を表したい。本当にありがとうございました。
その記念すべき50号の特集タイトルは「コペルは何を伝えてきたのか?」…本当に、いったい何を伝えてきたのか?
編集長としてただ一つ言えることは、コペルは終始一貫して、直売と地域づくりの現場を訪ね、そこで悩み、苦労し、笑って働いている人々の姿を切り取り、それを他の場所で同じことをする人々に伝えてきたということだ。少なくともそれを目指してきた。それだけは確かだ。
創刊前の2011年、東日本大震災の直後から、震災の現場に入った。その年の秋、当時信州大学農学部の教授だった木村和弘さんに言われた。「被災地の状況を伝えることも大切だが、被災地に、それ以前の災害の被災地がどのように復旧・復興を進めてきたのか、そのノウハウと教訓を伝えることの方がいま求められていることではないか」―と。
この示唆を受けて2012年には、2004年の新潟中越地震で全村避難となりながらも、見事に復旧・復興を進めた新潟県長岡市の旧山古志村地域に入った。直売・地産地消の視点を据えた復旧復興の取り組みの教訓を学ぶためだ。そして、その教訓を東北地方に広げることを目指した。
翌年、コペル創刊。「直売所を核にして地域を結ぶ情報ネットワークが必要だ。それを目指そう!」―これが、産直コペル創刊時のわが編集部の決意だった。
どこまで掘り下げられたのか?かみ砕いて伝えられたのか?本当に伝えることができたのか?…毎号、自問は尽きない。しかし、『産直コペル』が目指す「伝える」ことの根底には、一貫して、厳しい現実に直面し苦闘する人々から学び、それを本質的に同じ問題を抱えている地域に伝え、共に解決の道筋を探るという視点がある。なければいけないと考えている。
これまでも、そして、これからも。
(『産直コペル』編集長・毛賀澤明宏)
※この記事は「産直コペルvol.50(2021年11月号)」に掲載されたものです。