令和3年度の間接補助事業に決定したのは、『綾町自然生態系農業農力向上委員会』
綾町自然生態系農産物を活用した新商品を開発する
令和3年度LFP事業に取り組む綾町は、〝自然生態系農業〟が盛んな町として知られている。多くの農家が生産する農薬不使用や基準より農薬の使用を減らした安心・安全な農産物を、LFPでどう活用するのだろうか?(まとめ・中村光宏)
話を聞いた人:綾町役場 農林振興課 湯淺邦弘さん
綾町自然生態系農業農力向上委員会
パートナー
●エーケーエム(株)
●(有)コロンブスかわの
●(有)九南サービス
●(合)ソラカラ
●(株)宮交シティ
綾町は日本最大級の原生の照葉樹林で知られ、2012年には町の全域がユネスコエコパーク(生物圏保存地域)にも登録されている中山間地の町です。そんな照葉樹林の恵みの湧水は日本名水百選にも選定され、農業に活かされてきました。1988年に全国初となる「自然生態系農業の推進に関する条例」を制定して自然生態系農業、いわゆる有機栽培の推進にも取り組みはじめ、昨年には18戸の農家が集まって「綾町自然生態系農業農力向上委員会」を設立。現在は28戸が参加しており、ますます有機を目指す農家が増えています。
LFP事業は、その委員会が非常に興味を持ち参加を決めました。本当にゼロからのスタートだったのですが、研修会などを通して宮崎市のエーケーエムや宮交シティ、都城市の九南サービス、日向市のコロンブスかわのやソラカラと知り合い、綾町の農産物の価値を知り、それで社会的課題の解決と経済的利益の両立を目指してみようと考えてくださる皆さんとチームを組めたことで、綾町産農産物を使い、簡便性、健康志向、ちょっとした贅沢などをキーワードにした新商品の開発プロジェクトが発足。令和3年度の間接補助事業に選んでいただくことができました。
具体的には、九南サービスがカボチャ、ニンジン、ジャガイモなど7種の有機野菜とシイタケが入っていて、湯煎すればすぐに料理にご利用いただける乾燥野菜ミックスやそのまま食べても美味しいヘルシーな野菜チップスを担当、エーケーエムが美味しいだけではなくスープやサラダ、惣菜など幅広い料理に使えるサツマイモやニンジンの葉のペーストを担当、コロンブスかわのがお茶としてだけでなく、スープやパスタなどにふりかけるような調味料としても美味しくいただけるニンジンの葉の粉末を担当してくださり、計5品目を開発中です。中でもニンジンの葉は、今までなら捨てられてしまっていた部位ですが、実は栄養価が高く、加齢臭など人体が生成する臭気を減少させるともいわれているスーパーフード。農薬不使用の有機だから安心・安全に食べていただくことができます。また、味は同じなのに少し見てくれが悪いだけで規格外品となってしまう野菜も加工すれば活かすことができる。総合アドバイザーとして参画してくれているソラカラさんとも、SDGsの観点からしても是非実用化させようと話し合っています。
実は、これらのプロジェクトは綾町の宿願でもありました。というのも、綾町の農産物はこれまで生鮮一筋。30年ほど前から、時おり都会に出荷する機会があっても、輸送コストの問題で長続きすることはありませんでした。有機野菜の加工は今回のLFP事業で初めて挑戦するのですが、これが実現すれば商品が日持ちするだけでなく、軽くなるので輸送コストは大幅に軽減されます。加えて、物流を宮交シティが一元管理し、きめ細かく調整してくださることになっており、最大限にお求めやすい価格が実現できるものと思っています。そして、そうなれば継続的なお取引をいただけるようになる、より多くの方々に綾町の野菜の美味しさを知っていただくことができると思っています。
あと、今回のプロジェクトにはもうひとつ腹案がありまして、メンバー一同、綾町の安心・安全な野菜を子供たちにこそ食べてもらいたいと考えているんです。そこで、九南サービスが運営する健康志向の人気店「タマチャンショップ」の実店舗とECサイトという販路に加えて、宮交シティの親会社であるいちご㈱にご協力いただき、例えば優先的に保育園などに出荷し食べていただくことも検討中。さらに、各ご家庭で食べていただく分を生鮮から加工品まで混載し、保育園にまとめて送り、まとめ買いできるようなシステムを構築できれば、綾町の農産物の物流コストを最大限に軽減できるのではないかと考えています。南九州はこれからが野菜がどんどん出荷されてくる時期。綾町自慢の安心・安全な野菜を多くの方々に食べていただけるよう、企画の実現に向けて邁進します!
※この記事は「産直コペルvol.51(2022年1月号)」に掲載されたものです。