2021年1月26日に、みやざき交流研修会が完全オンラインで開催されました。研修会では、①のべおか道の駅株式会社 高木亨輔社長、②産直おすず村 阿部泰士課長、③道の駅高岡ビタミン館 森華恵駅長の3名からそれぞれの店の事例報告を行っていただきました。
事例報告① 売るためには努力が必要ーコロナ禍で学んだ
のべおか道の駅株式会社 社長 高木亨輔さん
私どもの会社では3つの道の駅をもっています。それぞれが立地も違い、顧客層も違います。
【北方よっちみろ屋】
1つ目が「北方よっちみろ屋」です。この店は、もともと直売所でした。平成27年に道の駅に指定され、行政等からの支援も受け、売り上げを伸ばしてきました。もともと直売所ですから、農産物が主力商品です。また手作りの総菜や弁当もあります。客層は、北方や延岡地方など地元の人が多いですが、高千穂へ行く観光客も一定数いました。この点において、コロナ禍では売り上げに影響がありました。
【北川はゆま】
2つ目が、「北川はゆま」です。ここは東九州自動車道の北川インターに近く、立地条件がとても良い店です。コロナ以前は、観光シーズンには駐車場が足りなくなるほどでした。それゆえ、コロナによる影響もとても大きかったです。客層は県内外の観光客、県外のビジネス客が多かったため、売り上げ減少が著しかったです。コロナ禍で立地が災いしました。
【北 浦】
3つ目が「北浦」です。ここは海に面した道の駅です。この店では、コロナ禍においても、併設のレストランでメニュー開発に力を入れたこと、またオートキャンプ場やテント等の宿泊施設も持っていたことにより、コロナ以前よりも売り上げを伸ばすことができました。
◆コロナにより改められた認識
コロナには苦労させられましたが、これがあったおかげで、今まで私たちがやってきた仕事への認識の甘さを知ることができました。正直、道の駅には何もしなくてもお客様がやってくる、商品を置けば売れるものと思っていました。しかし、物を売るためには努力しなければいけないのだと、認識をあらためることができました。
こうしたことから、売り場の変更をしたり、レストランの商品開発に力を入れたり、地元の良品を発掘したりするなど様々な工夫をするようになりました。
1つ例を挙げると「さいごうの栗きんとん・栗おはぎ」という商品があります。コロナ禍で導入した商品ですが、この2つの商品で大きな売り上げを上げています。私たちが伝えてきた「自分のおみやげにしてください。自分のご褒美にしてください」というアピールが認知されたのだと思っています。また、お客様からは「この商品がこの店でも買えるんだね」と喜んでいただいています。
県内いろんな場所へ行き、自分の足を動かして、自分の目と舌で確認して、商品を探すことの大切さを知りました。
これからは、今までの道の駅に対する考え方を変え、観光客だけでなく、地元の人のことを考えた品揃えに、工夫していくつもりです。総菜や弁当、団子などは、コロナ以前よりも売り上げが上がっています。これは、地域の人に、店舗を利用してもらっているからだと思っています。
全体で見れば、コロナ禍で大きく売り上げを落としてしまい、私自身、2年間悩みに悩みました。賞与や報酬をカットしても、まだ大きな赤字を計上しています。しかしこのことにより、今後、いかに生き残っていくかを模索する良い機会を与えられたと思っています。コロナを言い訳にしないで済むような経営をしていきたいと思っています。
品揃えは豊かに、入場人数は制限して…
産直おすず村 阿部泰士課長
産直おすず村は、JA尾鈴の直売所です。平成13年12月にオープンしました。出荷会員は300名程度です。2020年度の売り上げは、コロナ前よりも若干伸びました。
◆宅配需要による来客の増加
2020年4月頃から、ステイホームなどにより、宅配便で野菜や果物、お米等を買って送られる人が増えました。先ほどのお話にあった「縁故贈答」のような送られ方もあったと思います。川南町でもコロナ対策のために、宅配便の送料を負担する事業をしていたため、来客数・売り上げはかなり伸びました。店として告知等はしておらず、お客様は口コミで増えたように感じています。
◆コロナ対策
2020年4月からは店内に入る方を30名程度に、人数制限をしました。それ以外の方は外で並んで待っていただくという対応を6月頃まで続け、クレームも中にはありましたが、「ちゃんと対策をしている」とお客様から褒めていただくこともありました。また、買い物かごやカートの消毒も現在まで継続中です。
◆イベントの中止や変更
コロナ前までは、毎月、感謝祭を実施していました。感謝祭の日には、通常より安く出してほしいと生産者の方にお願いし、協力してくれた生産者の商品には赤丸シールをつけて値引きしているのがわかるようにしていました。この感謝際には毎月かなりのお客様が来てくれていたこともあり、混雑を避けるために中止しました。
また、長崎県西彼町漁協のうず潮カキの販売を3年前からやっていたのですが、これもコロナ禍で変更を迫られました。長崎から漁協の方が直接持ってこられて店頭で販売するという非常に人気のイベントで、行列ができるものだったのですが、混雑緩和のために予約制に変更しました。予約は、事前に店頭に来た方のみ予約できるという方法にすることで、最低2回は来店していただける形にしました。
◆品揃えの強化
当直売所は、仕入れを全くしないというポリシーで長いことやってきたのですが、私が担当になってからは、これを少し変えました。お土産業者の商品を置くのを認め、地元のかりんとう製造業者の商品も置くようにしました。これが非常に人気で、「縁故贈答」で農産物を送る際に、お土産品を一緒に詰める人もいて、売り上げが伸びました。
野菜等は基本は出荷者が持ってきたものが主ですが、時期によっては全く置けない品目もあります。ですので、玉ねぎ、にんじんなど、どの家庭でも年中使われるような野菜については、ない時期には仕入れをするようにしました。その点はPOPで明記しているのですが、こうした野菜も思っていたよりも買われていく方が多いので、品揃えの必要性を感じています。
◆イベント中止に代わるもの
先ほど申しましたように、感謝祭は中止し、来場者を増やすイベントはしていないのですが、その代わりにプチイベントと呼べるようなものを考えました。抽選で10名様、20名様に景品あるいは商品券を渡す日を月に3日設けています。来ていただくお客様に楽しんでもらえるように、またお渡しした商品券で当店にまた来てもらえるようにと実施しています。
◆SNSの活用
インスタグラムやラインの公式アカウントも2年程前に開設しました。なかなか更新できていないのですが、今後はそうしたSNSを利用して広報をしていくのも1つの方法と思っています。これらを使ってお客様と交流したり、イベントを考えて来場者を増やすのが今後の売り上げ確保に必要と考えます。
地元農業法人3社で会社作り 道の駅リニューアル
道の駅高岡ビタミン館 森華恵駅長
道の駅高岡ビタミン館は、宮崎駅から車で15分程度、一番近いインターからは車で5分ほどで着きます。平成5年の4月に宮崎県の道の駅第一号に登録されました。
当駅は、2019年4月から指定管理者が変わりました。地元の農業法人3社で構成される、株式会社アグリデザイン高岡という組織です。店舗も大幅にリニューアルしました。
◆道の駅のリニューアル
リニューアル前の問題点としては、①施設の老朽化が進んでいたこと、②5年単位で管理者が変わっていたため、根本的な改善がおこなわれていなかったこと、③時代にあった店舗ではなかったことが挙げられます。そんな中で、こうしたあきらめムードをなんとかしたいと、私たちが指定管理者に手を挙げました。
リニューアルして、床や内外観を木目調にして、明るい雰囲気に変えました。野菜入れも木箱にして、マルシェのような感じを出しました。また、カフェも設置して、店内で飲食できるスペースを作りました。
◆ビタミンパーク
そしてリニューアルに伴い、ビタミンパークというスペースを新設しました。ここには、貸し切りドッグランスペースを設けました。15分からの利用プランもあるので、買い物やドライブの隙間時間での利用に使用していただいたり、貸し切りという形が珍しいと、好評いただいています。
さらに、2021年4月には、ビタミンパーク内にキッチンカーをオープンし、テラス席も置きました。キッチンカーでは、あたたかいお弁当やアラカルトを販売し、近隣の予約注文については配達も可能としました。
また同月に、イベント主催者に場所を提供する形のイベントスペースもオープンしました。こちらはコロナの影響でなかなか活用が進まなかったのですが、11月頃から定期的にフリマやマルシェ、ロードバイクの試乗会など開催できるようになりました。
◆来店者数の増加と客層の変化
リニューアル後、売り上げ・来店者数ともに順調に伸びています。以前は、地元の50代以上の女性を中心としたお客様が多かったのですが、現在では、幅広い年代の人に利用してもらえるようになりました。
客数が増えたことの要因には、改装によって店内の雰囲気が明るくなり、お客様が店舗に入りやすくなったことがあると思います。
また、ドッグラン設置により、今までビタミン館を利用していなかった人にも、この場所を知ってもらえるようになりました。市内外の若い世代の利用者も増えました。
さらに、インスタグラムによる発信やマルシェイベント等で、これまでほとんど利用がなかった10代、20代の人にも来店いただけるようになりました。
◆今後の目標
今後も、引き続き品揃えを充実させ、コロナの状況を見ながらイベントも定期開催していきたいと思っています。また、地域ネットワークへの積極的な参加や、県外の道の駅等との商品交流も考えています。さらに、地元在住・出身の方と協力し、ビタミン館だけでなく、高岡町をPRしていくことができたらと思っています。
(2022年3月発行 宮崎版 さんちょく新聞Vol.5 記載)