奈良県西北部平群町にある「道の駅大和路へぐりくまがしステーション」は、農産物直売所「とれたて市」を中心に、特産品を販売する売店、レストラン、漬物などを加工する加工所を併設した複合型の道の駅だ。 同店の取り組みについて、スタッフのひとり、弓戸章雄さんに話を聞いた。
30センチを超える「古都華パフェ」!
道の駅大和路へぐりくまがしステーション」がある平群町は、平群谷とも呼ばれる山間の小平野で、古代から続く歴史ある地だ。明治末期から始まった小菊の栽培は現在も盛んに行われ、夏秋期には日本一の出荷量となる。同店に花・植木専門の売り場が設けられているのには、そうした地域の特徴が反映されている。
花きと並び、同店の主力となっているのがイチゴだ。真っ赤なイチゴから白イチゴまで、季節になるとさまざまな品種が店頭に並び、来る人の目を楽しませてくれる。中でも一押しなのが、奈良県で育種された「古都華」。ツヤのある赤色と香り、糖度と酸度の高さが特徴で、2011年に品種登録された新品種だ。12月〜4月にかけては、「古都華」の旬真っ只中。そんなフレッシュな古都華を惜しげもなく使った「古都華パフェ」が食べられることでも有名なのが、同店の自然派レストラン「hanana」だ。イチゴがタワーのように積みあがったパフェの高さは、なんと30センチ!古都華のフレッシュなおいしさを存分に味わうことができる。 「この古都華パフェ、昨年は長蛇の列が出来てしまって、レストランの通常営業に支障が出てしまう程で。なので今シーズンは完全予約制にしました。1日30食限定ですが、昨年の倍、イチゴ2パックを惜しげもなく使っています(笑)。多くの人に味わって頂きたいですね」
レストランも加工品も直売所の魅力を伝えるために
古都華パフェのほかにも人気なのが、月2600食も出るという週替わりの「とれたてランチ」だ。日々直売所に出荷される平群町産の季節の野菜を使用するため、野菜だけは日替わりで変わることも。「さつま芋と鶏もも肉のシチュー」、「ローストポーク 蒸し平群野菜」など、メインに平群町産の野菜をふんだんに使った副菜を添え、旬のおいしさを来る人に提供している。食材を書いた看板には、生産者の名前と品目も明記し、直売所で買えることをアピール。レストランから直売所への動線を作っている。
農産物を主体にしたPRやメニュー開発を心がけているのも、全ては直売所「とれたて市」の魅力を知ってもらうため。
「やはり売上の大部分を占める直売所は道の駅の要です。レストランも販売している加工品も、直売所を盛り上げるための〝枝〟のような存在だと考えています」と弓戸さん。
例えば、直売所に出荷されるトマトを使った「とまとぽんず」や「とまとソース」なども近隣のメーカーと協力して作ったオリジナル製品だ。 「地産地消から地産〝他〟消へと、移行しつつある。その中で試行錯誤しています」
「コンシェルジュ」が生産者と店の橋渡し
「とれたて市」でも独自の取り組みを行っている。
「直売所には『とれたて市コンシェルジュ』と呼ぶスタッフを置いています。女性スタッフ1名と補助にもう1名を抜擢し、農産物の品質やバーコードが付いているかどうかなどをチェックし、必要があれば生産者に伝えるという役目を担ってもらっています。以前はバーコードの貼り間違えや貼り忘れも多かったのですが、今ではほとんどなくなりました。毎朝スタッフは生産者と顔を合わせますし、彼女の人柄もあって直売所はスムーズに回っています」
安全安心を担保するための防除暦の管理、「生産者の会」との毎月1回の会議など、細かな努力も重ねている。今では多くの直売所が使っている生産者へ売れ行きを知らせるメール配信システムを導入したのも10年以上前のこと。奈良県下では最も早かったそうだ。
「数字だけじゃない、いろいろな情報が現場にはあります。現場のスタッフも良い意見を出してくれますし、一丸となって店づくりをしていけたらと思っています」
大阪市、奈良市などにも近接し、昭和40年代以降、急速に市街地化が進んだ平群町で、農業の役割を再確認し、情報発信する拠点として設けられたのが同店だったそうだ。平成11年にオープンしてから、平群町を盛り上げるために何ができるのか模索し続けてきた。現在は公益財団法人平群町地域振興センターが指定管理者として入り、「生産者の会」には400件を越える出荷登録者が名を連ねている。 「生産者さんが作る新鮮な野菜はやっぱりおいしい!道の駅は生産者とお客さんをつなぐ役割を担っていると思います。平群町を盛り上げるためにできることをしていきたいと思います」。平群町のため、道の駅ができることを一丸となって進めている。
※この記事は、『産直コペル』Vol.34(2019年3月号)に掲載したものです。