地域づくり

【福井 道の駅特別視察ツアー】オープン半年で“50万人来場”の道の駅、1年半後にはどうなった!?

東信州次世代産業振興協議会(長野県上田市)が主催し、産直新聞社が事務局を務める「東信州次世代農商工連携セミナー」のスピンオフ企画「福井 道の駅特別視察ツアー」を11月24日・25日に実施した。同セミナーの第2回でその先進的な取り組みを紹介した「道の駅 越前おおの 荒島の郷」と、福井県で最も古い道の駅である「道の駅 九頭竜」を視察。現場をその目で実際に見るとともに、駅長から運営のリアルな実情や今後の展望などを聞いた。(まとめ・佐々木政史)

1日目「道の駅 越前おおの 荒島の郷」

一堂、マイクロバスで目的地の福井へ向かう

 東信州次世代産業振興協議会は、一般財団法人 浅間リサーチエクステンションセンター(AREC)をはじめ、長野県東信州地域の自治体、企業、大学、支援機関などの産官学が連携して長野県の地域振興を目指す団体だ。信州大学繊維学部のキャンパス内に拠点を構える。2022年8月から2023年1月まで、次世代アグリビジネス産業の現状と今後の展望を学ぶために「東信州次世代農商工連携セミナー」を実施しているが、今回、そのスピンオフ企画として、11月24日・25日の2日間、受講者などを対象に「福井 道の駅特別視察ツアー」を実施した。
 同セミナーの第2回で、前支配人の万年正彦さん(中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋)からその取り組みが紹介された「道の駅 越前おおの 荒島の郷」を実際に見に行き、現駅長から現状と今後の展望を伺うことなどが、ツアーの趣旨である。
 ツアーには長野県内から、道の駅・直売所の運営者やこれから開設しようとしている人など10名が参加。1日目は上田市の信州大学繊維学部を出発し、途中で松本市・新村駅にて待ち合わせた中南信地域の参加者を拾い、一路、福井県へ向かった。

非常に広い敷地を持つ「道の駅 越前おおの 荒島の郷」

 バスの中で自己紹介などを行い、参加者間の交流を深めた後、昼前に目的地の「道の駅 越前おおの 荒島の郷」(以下、荒島の郷)に到着。その規模の大きさに受講者からは感嘆の声が漏れた。敷地は4万9137㎡で東京ドームと大体同じくらいの広さ、建物の延べ床面積は5082㎡、駐車場は小型車169台、大型車33台、ハートフル駐車場4台、バイク10台を備える。
 建物内に入り、各々で特産品「九頭竜まいたけ」「上庄サトイモ」を中心に地場の野菜を揃えた直売所、“北陸の小京都”である大野らしい和菓子、地酒、弁当などの実に豊富な商品を揃える加工品コーナーを視察。その後、奥のフードコートで昼食をとった。さすが、運営会社が高速道路を運営するNEXCO中日本グループだけあり、まるでサービスエリアのように充実している。地域の名物である「九頭竜まいたけ」を使用したメニューが豊富で、参加者はまいたけバーガーや、まいたけ蕎麦、まいたけお握りなどに舌鼓を打った。

直売場は、地元特産品の「九頭竜まいたけ」「上庄サトイモ」が多く並ぶ
フードコートは広く充実している。九頭竜まいたけを使ったハンバーガーや天ぷら蕎麦などを食べることができる

 昼食後は、一堂、会議室に移動し網正樹支配人から、荒島の郷の取り組みの説明を受けた。荒島の郷は昨年4月22日にオープン。中心市街地から車で約20分と決して交通の便が良いとは言えない立地で、しかも当時は新型コロナウイルスが猛威を振るう最中だったにもかかわらず、目標の年間38万人の来場者数をわずか3カ月で突破。半年弱で50万人、年間で67万人ものお客が押し寄せ、大成功と呼べるスタートを切った。当然、参加者はその秘訣を聞きたいわけだが、網支配人は成功に導くために工夫したこと(立地、魅力づくり、商品開発、広報活動)を語ってくれた。
 一方で、オープンから約1年半を経て、いくつかの課題(来場者減や農産物の充実)が浮き彫りになってきたことも事実。こうした“言いにくいリアルな事実”も含めて、網支配人は率直に語ってくれ、参加者は耳をそばだて話に聞き入り、多くの質問が投げ掛けられた。

網正樹支配人が「道の駅 越前おおの 荒島の郷」の運営について、課題や今後の展望も含めて話してくれた

2日目「道の駅 九頭竜」

「道の駅 九頭竜」は中山間地にある。荒島の郷に比べると規模はとても小さいが、地元客や観光客に愛されている

 2日目に視察したのは、「道の駅 九頭竜」。同じ越前大野市内ながらも、荒島の郷よりも車でさらに30分ほど山道に分け入った中山間地にある。
 一堂が到着すると、すぐに運営会社の代表である巣守和義さんが笑顔で出迎えてくれた。まずはひと通り、巣守さんの説明を受けながら道の駅内の直売所を視察。その後、会議室に場所を移し、詳しくお話を伺った。
 実は、この道の駅 九頭竜は荒島の郷と連携し、共同で出荷者組織をつくっており、出荷者はどちらの道の駅でも自由に販売できることになっている。荒島の郷ができたとき、お客を取られて売り上げが減少するのではないかーー。当然、そのような不安や葛藤があった。それでも、生産者の利益と地域振興を第一に考え、荒島の郷を敵とせず、地域活性化を目指す同じ仲間とみて、連携に踏み切ったという。

「道の駅 九頭竜」の売り場。名物の舞茸弁当は、平日にもかかわらず昼を過ぎると売り切れる人気商品
「道の駅 九頭竜」運営会社の代表である巣守和義さん。地域を想う気持ちに一堂は胸を打たれた

 こうした荒島の郷との関係や、コンパクトな売り場にも関わらず年間8000万円もの売り上げを実現している理由など、巣守さんから様々な興味深いお話が語られ、参加者は熱心に聞き入った。昼食は地元特産のマイタケをふんだんに盛り込んだ大人気の舞茸弁当をいただき、その後、巣守さんとの別れを惜しみながらバスに乗り込み帰路についた。参加者からは「立地、規模、運営方法などが異なる2つの道の駅・直売所を比較することができ、自らの運営する道の駅・直売所の今後の事業展開を考えるうえで参考になった」、「視察だけでなく、参加者同士の交流も濃い時間だった」との声があがり、道の駅・直売所の運営や地域振興の在り方を考えるうえで、またとない学びの機会になったようであった。

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産直コペル 編集部
この記事は、産直新聞社の企画・編集となります。